犬のクッシング症候群|症状からケアまで獣医師が解説

結城チロロ動物病院トップページへ

〒330-0044
埼玉県さいたま市浦和区瀬ヶ崎3-16-5

結城チロロ動物病院 電話番号048-884-1211

9:00~12:00/16:00~18:30
※ 木曜休診日

犬のクッシング症候群|症状からケアまで獣医師が解説

「最近、愛犬の水を飲む量が増えた」「お腹がぽっこりしてきた気がする」といった変化を感じたことはありませんか?


これらの症状は、高齢犬に多く見られる内分泌疾患「クッシング症候群」(副腎皮質機能亢進症)の兆候である可能性があります。


この病気では、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)が過剰に分泌され、身体にさまざまな影響を及ぼします。一見すると加齢による変化に見える症状も、病気の重要なサインかもしれません。


今回は、クッシング症候群の症状や原因、早期発見のポイント、そして日常のケアについて詳しく解説します。


alt_text

クッシング症候群の症状とは

クッシング症候群の症状は、ゆっくりと進行するため、飼い主様が気づきにくいことがあります。ここでは、主な症状とその具体的な変化について説明します。


<多飲多尿>

水を大量に飲むようになり、排尿の回数や量が増加します。水飲み用ボウルがすぐに空になる、夜中にトイレに行く回数が増えるなどの変化が見られる場合は注意が必要です。また、トイレの失敗が増えることもあります。


<食欲亢進>

食欲が異常に高まり、いつも以上に食べ物を欲しがります。以前は興味を示さなかった食べ物にも執着するようになったり、ゴミ箱を漁るなどの行動が見られることがあります。


<腹部膨満>

腹部の筋肉が弱くなることで、お腹が膨れて見える「ビール腹」のような状態になります。散歩中や日常の動作でもお腹が目立つようになることがあります。


<皮膚や被毛の変化>

毛が薄くなったり皮膚が乾燥してフケが増えたりします。傷が治りにくくなることも特徴的です。被毛の艶が失われ、ブラッシングをしても以前ほど毛量を感じなくなることがあります。


<筋力低下>

筋力が低下するため、散歩を嫌がったり階段を上がるのをためらうようになります。高い場所へのジャンプをしなくなることがあります。


<パンティング(浅い呼吸)>

暑くない状況でも口を開けて息をすることがあります。特に運動後や夜間に目立つ場合は注意が必要です。


こうした症状に気づいたら、早めに動物病院を受診してください。


クッシング症候群の原因について

クッシング症候群の原因は主に以下の3つに分類されます。


<下垂体由来(下垂体腺腫)>

脳の下垂体に腫瘍ができ、副腎を過剰に刺激することでコルチゾールが過剰に分泌されるタイプです。全体の約80〜85%を占め、小型犬(プードル、ダックスフンド、ビーグルなど)に多く見られます。


<副腎由来(副腎腫瘍)>

副腎自体に腫瘍ができることでコルチゾールを過剰に分泌するタイプで、全体の約15〜20%を占めます。国内では特にシーズーなどに多い傾向があります。


<医原性クッシング症候群>

ステロイド薬の長期使用が原因となるタイプです。皮膚疾患や関節炎治療でステロイドを使用する際は、獣医師の指示に従い慎重に管理することが重要です。


クッシング症候群は特に7〜8歳以上の高齢犬で多く見られますが、若齢犬でも発症することがあります。


診断方法について

クッシング症候群の診断は、症状や飼い主様からの情報をもとに、さまざまな検査を組み合わせて行います。正確な診断を行うことで、適切な治療計画を立てることができます。


<診断の手順と方法>

クッシング症候群の診断には、症状や飼い主様からの情報に基づき、さまざまな検査を組み合わせて行います。これにより、原因を特定し、最適な治療計画を立てます。


① 問診・身体検査

症状や生活環境、既往歴を確認し、皮膚や腹部の状態をチェックします。

症状を正確に把握し、クッシング症候群が疑われるかどうかの初期判断を行います。


② 血液検査・尿検査

血液検査では肝酵素値(ALTやALP)やコルチゾールレベルを確認し、尿検査では低比重尿や尿中コルチゾール/クレアチニン比を測定します。

クッシング症候群に特徴的な代謝異常や内臓機能の影響を把握します。


③ ホルモン負荷試験

・低用量デキサメタゾン抑制試験(LDDST)

デキサメタゾンというホルモンを投与し、コルチゾール値の抑制反応を確認する検査です。

クッシング症候群の場合、コルチゾールが抑制されないことが特徴です。


・ACTH刺激試験

副腎を刺激するホルモン(ACTH)を投与し、コルチゾールの反応を測定します。


④ 画像診断(エコー・CT)

副腎や下垂体の腫瘍の有無や位置、大きさを確認します。特にCT検査は、手術を検討する際に重要な検査となります。


治療法について

クッシング症候群の治療の目的は、病気の進行を抑え、愛犬の生活の質を向上させることです。主に薬物療法が選択されますが、状態に応じて外科的治療が検討される場合もあります。


<薬物療法>

現在、クッシング症候群の治療で最も一般的に使用されているのはトリロスタン(ベトリル)という薬で、これを用いることで副腎でのコルチゾールの合成を抑えます。コルチゾールの過剰分泌を抑えることで、数週間から数ヶ月で症状が軽減することが期待できます。


<外科治療>

副腎腫瘍の場合、外科的に腫瘍を切除することが検討されることもあります。


<定期的な検査の必要性>

検査頻度は治療初期は1~2週間ごと、その後は数ヶ月ごとに実施されるのが一般的です。


治療を開始した直後や治療を変更した際には、ACTH刺激試験でコルチゾールレベルを測定します。


また、定期的な血液検査で薬が適切に作用しているか、過剰なコルチゾール抑制が起きていないかを確認します。薬の効果が強すぎると、逆に副腎皮質機能低下症などのリスクが高まるため、定期的なモニタリングが必要です。


<薬の副作用と注意点>

副作用として嘔吐、下痢、食欲不振、倦怠感などが見られることがあります。これらの症状が持続する場合は、すぐに獣医師に相談してください。自己判断で中止や変更をしないことが重要です。


日常生活でのケアと管理

クッシング症候群の治療には、飼い主様による日常生活のケアが重要です。適切な食事や運動、定期的な検診を行うことで、症状の進行を抑え、生活の質を向上させることができます。


<食事管理>

以下の点を心がけながら、獣医師が推奨するフードを、適切な量を与えるようにしましょう。


・低カロリー・高栄養バランスの食事:食欲が増加しやすいため、カロリーを抑えた食事が必要です。

・良質なたんぱく質:筋力維持のために、鶏肉や魚などの良質なたんぱく質を含むフードを与えます。

・塩分を控える:高血圧や糖尿病のリスクを軽減するため、塩分の少ない食事を与えましょう。


<運動管理>

筋力の低下や体重増加を防ぐため、毎日の散歩など軽い運動を取り入れることが推奨されます。ただし、無理をさせないことが大切です。短時間の散歩を1日に数回行う方が、体への負担が少なく効果的です。

また、クッシング症候群の犬は体温調節が苦手になる場合があるため、散歩や運動を行う際は暑さや寒さを避け、気候が穏やかな時間帯を選ぶようにしましょう。


<投薬管理・健康観察>

薬を一定の時間に規則正しく与え、自己判断で中止や変更をしないよう徹底してください。また、愛犬の日常的な変化(食欲、排尿回数、活動量など)を観察し、異常があれば早めに獣医師に相談しましょう。


<定期検診>

定期的な血液検査やホルモン負荷試験を通じて薬の効果や副作用を確認し、治療が適切に進んでいるかを評価します。


特に治療を始めた初期段階では、頻繁に検査を行うことが推奨されます。また、体重の増減や多飲多尿の変化など、日常的に記録した症状を診察時に獣医師と共有することで、治療計画の見直しや改善につながります。


予後と生活の質について

クッシング症候群の予後は、下垂体性か副腎性か、また治療を開始したタイミングなどにより異なりますが、一般的な中央生存期間は1.5〜3年ほどです。治療を行わない場合、予後は著しく短くなるため、適切な治療が欠かせません。


クッシング症候群は完治が難しい病気ですが、適切な治療により多くの犬が快適に生活を送ることができる病気です。治療を始めることで、多飲多尿や食欲の改善、皮膚や被毛の状態の改善、活動量の増加といった変化が期待できます。


クッシング症候群は慢性的な疾患であるため、継続的な管理が必要です。飼い主様の細やかなケアと獣医師との連携が、愛犬の健康を支える重要なポイントとなります。


まとめ

クッシング症候群は、高齢犬を中心に多く見られるため、加齢による変化と見過ごされることも少なくありません。多飲多尿や食欲亢進、腹部の膨満、皮膚や被毛の変化といった症状が見られた場合は注意が必要です。


適切な診断と治療を受けることで、病気の進行を抑え、生活の質を大きく向上させることが可能です。少しでも気になる症状があれば、早めに獣医師に相談しましょう。


■関連する記事はこちら

慢性疾患の通院、負担に感じていませんか?|薬のまとめ処方で通院の悩みを解消

犬と猫の皮膚疾患について|種類や症状を解説!


埼玉県さいたま市浦和区 結城チロロ動物病院

Tel: 048-884-1211


診療案内はこちら

結城チロロ動物病院 ページ内遷移