愛犬が突然倒れ、体を痙攣させる発作を目の当たりにしたら、飼い主様は驚きと不安に包まれることでしょう。
「どうしたらいいの?」「命に関わるのでは?」と慌ててしまうのは自然な反応です。しかし、犬のてんかんや発作は、正しい知識を持ち、適切な治療と管理を行うことで、愛犬と安心して暮らしていくことができます。
今回は、犬の発作やてんかんに関する症状、原因、治療法、さらに飼い主様ができる具体的な対応について詳しく解説します。

犬の発作・てんかんの症状とは
医学的に「発作」とは、一時的に現れる症状を指します。その中でも「てんかん発作」は、大脳皮質内での異常な電気信号によって引き起こされる現象です。発作の症状や持続時間には個体差があり、さまざまな形で現れます。
<主な症状>
発作時に見られる主な症状は次の通りです。
・全身を小刻みに震わせる、または大きく動かす(痙攣)
・突然倒れ、起き上がれなくなる
・体が硬くなり、動かなくなる
・口元から泡を吐くような状態になる
・瞳が動かず、白目が見える
・排尿や排便を制御できなくなる(失禁)
・意識がなくなる、飼い主様の呼びかけに反応しない
また、発作が収まった後に、ボーッとしたり、動きが鈍くなるなど、いつもと様子が異なることも多くみられます。
<持続時間と頻度>
通常、発作は数秒から数分間で収まりますが、5分以上続く場合は「てんかん重積状態」と呼ばれる命に関わる状態です。また、短時間で複数回発作が起きる場合も危険な兆候です。これらの場合はすぐに動物病院へ連絡してください。
発作・てんかんの原因について
犬の発作やてんかんには、いくつかの原因が考えられます。それぞれの原因によって治療方針が異なります。
<特発性てんかん>
特発性てんかんは、脳に明確な異常が見られないタイプのてんかんで、遺伝的要因が関係しているとされています。犬の発作の中でも最も一般的なタイプです。特に小型犬や一部の中型犬で発症しやすく、代表的な犬種としてはチワワ、トイプードル、マルチーズ、ビーグルが挙げられます。
<その他の原因>
発作やてんかんの原因は多岐にわたり、特発性てんかん以外にもさまざまな原因が考えられます。例えば、高齢犬に多い脳腫瘍は、脳内の圧迫や異常な活動を引き起こし、発作の原因となることがあります。
また、感染症や自己免疫疾患によって脳や脊髄、髄膜に炎症が生じる脳炎も発作を誘発する原因の一つです。さらに、薬物や毒性のある食品、物質を摂取した場合の中毒や、頭部への強い衝撃による外傷も、発作を引き起こす原因となることがあります。
特に子犬や小型犬、糖尿病治療中の犬では、低血糖が発作を誘発する場合があり、代謝性の問題にも注意が必要です。
診断・検査について
犬の発作やてんかんの診断には、症状の観察だけでなく、さまざまな検査を組み合わせることで原因を特定し、適切な治療方針を立てることが重要です。
<血液検査>
血液検査では、犬の全身の健康状態を確認します。特に低血糖や肝疾患、腎疾患など、発作を引き起こすおそれのある基礎疾患がないかを調べます。また、代謝異常や毒物中毒が疑われる場合には、血液検査が早期発見と治療に役立つことがあります。
<レントゲン検査>
胸部や頭部の骨格構造を確認するために行われる検査です。脳に影響を及ぼす腫瘍や頭部外傷がないかをチェックするだけでなく、全身の健康状態を把握する補助的な役割も果たします。
<MRI検査(磁気共鳴画像)>
MRI検査は、頭蓋骨内の詳細な画像を取得することで、脳腫瘍や脳炎、その他の構造的異常を検出するために行われます。発作が脳内の病変によるものかを確認するために非常に重要な検査であり、特に特発性てんかんの場合には、MRI検査で脳に異常が見られないことが一般的です。
<神経学的検査>
獣医師が犬の体を直接触診し、反射弓の異常を確認する検査です。この検査により、病変が脳に起因するものなのか、脊髄や末梢神経の異常によるものなのかを推定します。これにより、治療方針をさらに明確化することにつながります。
治療法と予後について
治療は発作の症状や原因に応じて異なります。以下に主な治療法をご紹介します。
<抗てんかん薬による治療>
フェノバルビタールやゾニサミド、レベチラセタムなど、脳内の異常な電気活動を抑える効果のある抗てんかん薬を使用して、発作の予防を行います。
この治療では長期間にわたる投薬が必要になる場合が多いため、定期的な血液検査を実施し、薬の効果や副作用をモニタリングすることが重要です。自己判断で投薬を中止すると危険な状態に陥るおそれがあるため、必ず獣医師の指示に従って投薬を継続してください。
<緊急時の対応>
発作が5分以上続く「てんかん重積状態」や短時間に頻発する発作の場合は、迅速な対応が求められます。この際、獣医師が処方したミダゾラムなどの抗てんかん薬を鼻腔内に投与するか、または静脈注射を行い、速やかに発作を抑えます。
<長期的な管理>
てんかんの治療では、発作のコントロールだけでなく、継続的な管理も欠かせません。定期的に動物病院で診察を受け、治療計画を見直すことで、最適なケアを続けることができます。
発作の頻度や持続時間、様子を記録し、診察時に獣医師と共有することで、より効果的な治療につながります。また、ストレスを軽減し、規則正しい生活を心掛けることが、発作の予防に役立つ場合があります。
適切な治療と管理を行うことで、多くの犬が通常の生活を送ることができます。
発作時の対応方法
発作が起きた際には、パニックにならず、冷静に対応することが大切です。
<発作時の具体的な対応>
①安全な環境を確保する
まず、愛犬を周囲に危険な物(家具、階段、鋭利な物など)がない安全な場所に移動させます。発作中に体を強く動かすことがあるため、周囲の環境を整えることが重要です。
②発作中の観察
発作中は無理に体を触ったり抑えたりせず、見守りましょう。噛まれるリスクがあるため、絶対に口に手を入れないでください。
③記録を残す
発作が始まった時刻と、何分間続いたかを記録します。また、可能であればスマートフォンなどで動画を撮影してください。この情報は、獣医師の診断の手がかりになります。
④発作後のケア
発作が収まったら、愛犬を静かな場所で休ませます。その後の様子に異常がないかを慎重に観察しましょう。
<緊急性の判断基準>
以下のような場合には、すぐに動物病院へ連絡し、指示を仰いでください。
・発作が5分以上続く
・発作後にふらつきが続く
・発作後に意識が戻らない
・発作後に呼吸が浅くなる、または停止する
・1日に複数回発作が起きる
発作時の行動は、愛犬の安全を確保し、診断や治療を進める上で重要な役割を果たします。状況を冷静に把握し、必要に応じて速やかに動物病院を受診しましょう。
まとめ
愛犬のてんかんや発作に直面すると、不安でいっぱいになるかもしれません。
しかし、正しい知識を持ち、適切に対応することで、発作を管理し、愛犬と穏やかな生活を送ることができます。
また、発作時には慌てず、安全を確保した上で観察や記録を行いましょう。飼い主様の冷静な対応が愛犬の治療に大きく役立ちます。
不安や疑問があれば、早めに動物病院に相談し、愛犬にとって最善の治療計画を立てましょう。
■関連する記事はこちら
・慢性疾患の通院、負担に感じていませんか?|薬のまとめ処方で通院の悩みを解消
埼玉県さいたま市浦和区 結城チロロ動物病院
Tel: 048-884-1211