犬と猫の腎臓病について|原因・症状・治療法を獣医師が解説!

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犬と猫の腎臓病について|原因・症状・治療法を獣医師が解説!

腎臓は、血液をろ過して体内の老廃物や毒素を尿として排泄し、体内の電解質バランスを一定に保つ、血圧を調節するなど、生命維持に重要な機能を担っています。
しかし、加齢とともに腎臓の機能は低下し、慢性腎臓病を発症することがあります。特に、老猫では慢性腎臓病になるケースが非常に多いです。


慢性腎臓病はペット保険の保険金請求上位の疾患でもあり、進行した場合、腎機能が回復することはないため、生涯にわたって病気と付き合っていく必要があります。


この記事では犬と猫の腎臓病の原因や症状、治療法などについて詳しく解説します。


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原因

腎臓病には大きく分けて、以下の2種類に分けられます。


急性腎臓病 (数時間〜数日で急激に腎臓の機能が低下する)
慢性腎臓病 (加齢とともに年単位で腎臓の機能が低下する)


特に犬や猫では慢性腎臓病が問題になります


急性腎臓病は、腎前性 (腎臓への血流が低下する)、腎性 (腎臓そのものにダメージを受ける)、腎後性 (腎臓から尿を送り出すことができなくなる)の3つに大きく分けられます。


①腎前性

重度の脱水、熱中症、手術中の大量出血など


②腎性

尿路感染による細菌性腎盂腎炎、毒物の摂取 (ブドウ、ユリ、不凍液など)、糸球体腎炎などの自己免疫性疾患など


③腎後性

尿石症による尿道閉塞など


また慢性腎臓病は、加齢とともに腎機能が低下する正確な原因は不明ですが、特定のウイルス感染の影響や、水を飲まないこと、遺伝的要因などが関与していると考えられています。
加齢による慢性腎臓病を完全に予防することはできません

症状

急性腎臓病は元気の消失や食欲の低下、嘔吐、下痢などの症状が見られます。


慢性腎臓病はIRIS(国際獣医腎臓病研究グループ)の慢性腎臓病ガイドラインにより4つのステージに分けられます。


・ステージ1(高窒素血症なし)

最も初期の段階で症状は見られない。


・ステージ2 (軽度の高窒素血症)

症状は見られないことがほとんど。稀に多飲多尿などの軽い症状が見られる。


・ステージ3 (中等度の高窒素血症)

食欲不振、嘔吐、下痢、脱水、貧血など種々の症状が見られる


・ステージ4 (重度の高窒素血症)

ステージ3の症状に加えて元気・食欲の低下、意識レベルの低下、激しい嘔吐などさらに重篤な症状が見られる。積極的に治療介入を行わないと命を落とすこともある状態。


また腎臓病の中には、慢性腎不全と呼ばれる病気もあり、「腎不全」という言葉の定義は曖昧ですが、一般的には腎臓の機能が正常時の30%以下になった状態のことを指します。
IRIS分類ではステージ3、4に相当し、食欲不振、嘔吐、下痢、脱水、貧血、血圧の低下など様々な症状が見られます。

診断方法

腎臓病の診断は。血液検査や尿検査 、画像検査 (レントゲン検査やエコー検査)などを総合的に用いて行います

慢性腎臓病の確定診断には腎臓生検 (腎臓に針を刺して細胞を採取する)が必要ですが、侵襲度の高い検査であるため、実施することはほとんどありません。


各検査の主な内容は以下の通りです。

・血液検査

腎臓病ではBUN (尿素窒素)、クレアチニン、SDMAが上昇します。
中でも、SDMAは腎臓病が進行する前から異常値を示すため、腎臓病の早期発見に非常に有用です。

・尿検査

尿比重の低下、タンパク尿の有無、尿蛋白クレアチニン比 (UPC)などを評価します。


・レントゲン検査

腎臓のサイズの測定や、腎臓腫瘍、尿路結石症の有無などを評価します。


・エコー検査

腎臓や膀胱内部の状態を確認します。


慢性腎臓病の厄介な点は、血液検査で異常が現れるのは腎機能の大部分を失ってからだという点です。つまり、 病気が進行して発見されることが多いため、慢性腎臓病を早期に発見するためには血液検査だけでなく尿検査と画像検査もセットで行う必要があります

治療方法

急性腎臓病の場合は、それぞれの原因疾患に対する治療を行います。具体的には、脱水に対する輸液療法、尿路感染症に対する抗菌薬の投与、尿道閉塞に対する閉塞の解除などです。


慢性腎臓病は治癒させることはできないため、進行を抑えることを目標に治療を行います

治療法としては、定期的な皮下輸液による脱水の改善、腎臓病用の食事療法(主にタンパク質、リン、ナトリウムの含有量を制限)、腎機能の悪化を和らげる薬やサプリメントの投与、降圧剤の使用、下痢や嘔吐に対する対症療法などがあります。これらの治療を組み合わせ、QOL(生活の質)を維持しながら、長期的な管理を行います。


なお、これらの治療の多くはペット保険の適用対象となることが多いため、当院スタッフにご相談ください。

予防法とご家庭での注意点

腎臓病を完全に予防することは難しいですが、以下のような取り組みにより、発症リスクを下げたり、早期発見・早期治療につなげたりすることができます。


常に新鮮な水を飲めるようにする
人間の食事など、不適切なものを与えない
血液検査、尿検査、画像検査を含む総合的な健康診断を定期的に受ける

まとめ

一度失った腎臓の機能は回復しないため、腎臓病は早期発見・早期治療を行うことが何よりも重要です


普段から定期的に動物病院で血液検査を含めた健康診断を受けるようにしましょう。

腎臓病と診断された場合は、治癒を目指すのではなく、進行を遅らせることを目標に、生涯にわたって管理していく必要があります。


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