犬と猫のリンパ腫について|早期発見がカギ!種類別症状と治療法

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犬と猫のリンパ腫について|早期発見がカギ!種類別症状と治療法

リンパ腫とは、一言で言えば白血球の一種であるリンパ球が異常に増殖する「血液のがん」です。リンパ腫は、犬や猫に多く見られる腫瘍性疾患の一つで、治療が遅れると急速に容体が悪化し、命を危険にさらすこともあります。そのため、早期発見と治療が非常に重要です。


今回は、犬と猫のリンパ腫の原因や症状、治療法について詳しく解説します。


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リンパ腫とは

リンパ腫とは、白血球の一種であるリンパ球が異常に増殖する血液の悪性腫瘍です。

リンパ球は、抗体を産生したり、異物を直接攻撃したりする免疫細胞で、全身に広く存在しています。そのため、リンパ球の腫瘍であるリンパ腫は、体のどの部位にも発生する可能性があります。


リンパ腫は犬や猫によく見られる病気で、犬の腫瘍全体の7~24%、猫の腫瘍全体の約30%を占めると言われています。


原因はまだ明らかになっていない部分が多いですが、猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)に感染している猫は、発症リスクが高いとされています。また、一部の犬種やタバコの受動喫煙などの環境因子も、発症に関与していると考えられています。


リンパ腫の種類と症状

リンパ腫は、腫瘍が発生する部位によって大きく5つに分類され、それぞれの種類によって主な症状が異なります。


<多中心型>

多中心型リンパ腫は、犬のリンパ腫全体の約80%を占める最も多いタイプです。このタイプでは、体表にあるリンパ節(下顎リンパ節、鼠径リンパ節、膝窩リンパ節など)が腫大し、進行すると肝臓、脾臓、骨髄、脳などの臓器に広がっていきます。


症状としては、体重減少、食欲不振、元気消失などが見られます。


猫では多中心型の発生は少ないものの、比較的若い猫で全身のリンパ節が腫大することがあります。


<縦隔型(前縦隔型)>

縦隔型リンパ腫では、胸腔内にある前縦隔リンパ節や胸腺が腫大します。この腫瘍が肺を圧迫することで、嚥下困難や吐出が起こり、さらに胸水が貯留することで呼吸困難が生じることがあります。


猫では、3〜6歳の若い猫に多く見られるタイプで、リンパ腫の中でも非常に発生率が高いタイプの一つです。


<消化器型>

消化器型リンパ腫は、犬のリンパ腫全体の5〜7%を占めています。このタイプでは、消化機能の低下や吸収不良によって、下痢、嘔吐、体重減少、食欲不振などの症状が見られます。


猫では、10歳以上のシニア猫に多く発生し、その発生割合は前縦隔型と並んで非常に多いとされています。特に、小腸に発生することが最も多いと言われています。


<皮膚型>

皮膚型リンパ腫は、犬と猫の両方において、比較的珍しいタイプのリンパ腫です。


このタイプでは、皮膚に腫瘍が発生しますが、一つの腫瘍が単独で現れる場合もあれば、全身に多発することもあります。


<節外型>

節外型リンパ腫は、眼球、腎臓、中枢神経系、骨など、さまざまな組織から発生しますが、非常に珍しいタイプです。発生する部位によって、現れる症状も異なります。


例えば、中枢神経系に発生した場合、痙攣やふらつきといった中枢神経症状が見られます。腎臓に発生した場合は、多飲多尿や貧血など、腎機能に関連した症状が現れることがあります。


リンパ腫の診断方法

体表のリンパ節が腫大している場合や、症状や年齢などからリンパ腫が疑われる場合、まず細い針をリンパ節に刺して細胞を採取する「細胞診検査」を行います。細胞診で腫瘍化したリンパ球が確認されれば、その時点でリンパ腫と診断されます。


消化器型リンパ腫の場合は、内視鏡検査を実施して病変の一部の組織を採取し、病理検査に提出する「生体組織診断(生検)」を行って診断します。また、増殖したリンパ球の遺伝子を確認する「遺伝子検査」によって、リンパ腫の有無やどの細胞が腫瘍化したのかを評価することもあります。


これらの検査に加えて、血液検査や画像検査(レントゲン検査、超音波検査など)といった一般的な検査を行うことで、リンパ腫の進行度(臨床ステージ)や悪性度を判定します。

これらの情報は、治療方針を決定する上で非常に重要です。


リンパ腫の治療法

リンパ腫は「血液のがん」であるため、皮膚型の孤立性の腫瘍を除けば、外科手術で腫瘍を完全に取り除くことは難しいです。そのため、治療の中心となるのは抗がん剤治療です。


使用する抗がん剤には、ステロイド、ビンクリスチン、シクロホスファミドなど、さまざまな種類があります。


治療薬の選択は、リンパ腫の種類(分化型、T細胞性 or B細胞性)、ステージ、愛犬や愛猫の健康状態などを考慮して行われます。


多くの場合、4週間を1クールとし、5クール(約5ヶ月)の治療が行われます。この期間中に治療を継続することが非常に重要です。また、腫瘍の周囲や発生部位によっては、放射線療法や外科手術を抗がん剤治療に組み合わせることもあります。


ただし、リンパ腫の抗がん剤治療は高額になることが多く、さらに治療期間も長期にわたるため、費用がかさむ傾向があります。ペット保険に加入している場合は、実施する治療に保険が適用されるかどうか、あらかじめ確認しておくことをおすすめします。


リンパ腫の予後と生存期間

リンパ腫の予後は、種類や治療開始時のステージ、治療に対する反応によって大きく異なります。データによると犬のリンパ腫は治療を行わない場合、ほとんどの犬が4~6週間後に命を落とすと報告されているため、できるだけ早く治療を開始することがとても重要です。


おおよその目安として、犬でよく見られる多中心型リンパ腫に対して適切な抗がん剤治療を行った場合、1年後の生存率は約50%、2年後は約20%、3年後は約10%弱と言われています。


猫のリンパ腫は、犬よりも予後が悪いことが多いですが、それでも抗がん剤治療によって約50%の猫で完全寛解が達成されたという報告があります。


ただし、これらの数字はあくまで過去のデータに基づくもので、5年以上生存するケースもあれば、治療を行っても数ヶ月で命を落としてしまう場合もあります。


最も大切なのは、生きている間の生活の質(QOL)を高め、少しでも楽に治療を続けていけるようにすることだと考えています。


リンパ腫の予防法

リンパ腫は腫瘍性疾患のため、確実な予防法はありません。ただし、環境因子(受動喫煙や発がん性物質の摂取など)がリンパ腫のリスクを高める可能性があるため、自宅でタバコを吸わないなどの配慮は大切です。


また、定期的に健康診断を受けることで、病気を早期に発見し、早期治療につなげることができます。


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まとめ

リンパ腫は犬や猫に多く見られる病気で、適切な治療を行わなければ、短期間で病気が進行し、命を落とすこともあります。しかし、早期に発見し、早期に治療を行うことで、寛解する可能性も十分にあります。


そのため、定期的に健康診断を受けることや、自宅での様子を注意深く観察することが大切です。もし何か気になることがあれば、すぐに獣医師にご相談ください。


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