外耳炎は、犬の耳介から鼓膜までの「外耳道」と呼ばれる部位に炎症が発生する病気です。痒みや痛みを伴うため、犬の生活の質は大きく低下します。
春から夏にかけての季節の変わり目は、気温の上昇により耳の中が蒸れやすくなるため、外耳炎を発症する患者さんが増加します。
この記事では、犬の外耳炎の原因や症状、診断、治療方法などを解説します。
原因
犬の外耳炎の主な原因は、以下の通りです。
・寄生虫感染:ミミヒゼンダニなどの寄生虫が犬の耳の中に入ることで、炎症を起こすことがあります。
・アレルギー:アトピー性皮膚炎や食物アレルギーにより、耳の中のバリア機能(自浄作用)が低下することで、外耳炎になりやすくなります。アレルギーが原因の炎症は、治りにくく、再発することも多いです。
・腫瘍:耳の中や周りに腫瘍ができると、外耳炎を引き起こすことがあります。特にシニア犬になると腫瘍のリスクが高くなります。
・異物による刺激:異物が耳に入ることで炎症が生じることがあります。
・環境的要因:湿気の多い環境、シャンプー後に耳の中が濡れたままなどの状態は、外耳炎になるリスクを高めます。
特に湿度が上がる夏場は、耳の中が蒸れやすく、真菌や細菌が繁殖しやすい環境となるため、外耳炎が多発します。
また、
・アメリカン・コッカー・スパニエル
・ゴールデン・レトリーバー
・キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
などの垂れ耳の犬種は、外耳炎の好発犬種として知られています。
症状
外耳炎の主な症状は、耳の痒みと痛みです。ご自宅でよく見られる症状は以下が挙げられます。
・耳を引っ掻く、壁に擦り付ける、耳を気にするなどの仕草
・耳の発赤や腫れ(重度の場合は、ゾウの皮膚のように耳の内側が厚く腫れることがあります)
・耳からの悪臭や耳だれ
・黒っぽい耳垢の増加
外耳炎を放置すると、炎症が鼓膜の奥にある中耳や内耳、さらには脳にまで波及し、中耳炎、内耳炎、髄膜脳炎などに発展することがあります。内耳は平衡感覚をつかさどる器官であるため、内耳炎になると末梢性の神経症状(頭を斜めに傾ける、一方向にぐるぐる回る、まっすぐ歩けないなど)が現れることもあります。
また、髄膜炎や髄膜脳炎は、痙攣発作や重篤な中枢神経症状を引き起こす可能性があり、場合によっては生命の危険もあるため、外耳炎の段階で適切な治療を行うことが重要です。
診断方法
外耳炎が疑われる症状(耳を痒がる、耳が腫れている、耳が臭いなど)が見られた場合、獣医師は耳鏡(耳の鼓膜まで拡大して観察できる道具)を用いて、外耳道から鼓膜までの状態を観察します。炎症が外耳道のみに見られる場合は外耳炎と診断します。
中耳炎や内耳炎が疑われる場合(鼓膜まで炎症が波及している、神経症状が見られるなど)は、全身麻酔下でCT、MRI、ビデオオトスコープ(耳栓用の内視鏡)などを用いて詳細な診断や治療を行うことがあります。
治療方法
外耳炎の治療は、以下の手順で行われます。
1.耳垢の除去
耳垢が蓄積している場合は、イヤークリーナーや生理食塩水を用いて耳の中を洗浄します。薬剤の浸透を良くするために、耳垢の除去は非常に重要な作業です。
2.点耳薬の使用
洗浄後、ネプトラやオスルニアなどの点耳薬を用いて治療を行います。炎症や痒みが重度の場合は、点耳薬に加えてステロイドの内服を併用し、より強力に炎症を抑えることがあります。
3.原因疾患の治療
食物アレルギーやアトピー性皮膚炎が原因の場合は、食事療法やアトピー性皮膚炎に対する治療も同時に行います。
予防法やご家庭での注意点
外耳炎の予防には、ご自宅で週に1回程度、耳の外側を優しく拭き取ることが有効です。
外耳炎を予防しようと耳掃除は毎日行う方がいらっしゃいますが、過度な耳掃除はかえって外耳道を傷つけ、外耳炎を誘発する可能性があるため注意が必要です。耳垢は自然に体外に排出される仕組みになっているため、毎日の耳掃除は必要ありません。
外耳炎の治療はペット保険が適用できるため、お気軽に当院スタッフまでお声がけください。
まとめ
外耳炎は、犬の外耳道に発生する炎症性の病気で、強い痒みや痛み、耳の腫れなどを引き起こします。
放置すると、中耳炎、内耳炎、髄膜脳炎など、より重篤な病気に進行する可能性があるため、早期発見と適切な治療が大切です。定期的な耳の観察と、必要に応じた獣医師への相談を心がけましょう。
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