ある日、愛犬や愛猫の体に小さないぼやしこりを見つけたとき、「これ、何だろう?大丈夫かな?」と心配になることはありませんか?
実は、犬や猫にできるいぼやしこりは、必ずしも深刻な問題ではない場合が多いものの、時には思いがけない病気のサインである場合もあるため注意が必要です。
そして、いぼやしこりには、「良性」と「悪性」がありますが、見ただけではどちらかを判断するのは非常に難しいものです。
今回は、犬や猫にできるいぼやしこりの特徴や種類について解説します。
犬や猫のいぼ・しこりの種類と特徴
犬や猫の体にできるいぼやしこりには、いくつかの種類があり、それぞれに見た目や特徴が異なります。まず、良性と悪性の違いについて簡単にご説明します。
<良性のいぼ・しこり>
良性のいぼやしこりは、健康に対するリスクが極めて低く、急速に悪化することはほとんどありません。ここでは、代表的な良性のいぼやしこりをご紹介します。
・脂肪腫
皮膚の下にできる柔らかく丸いしこりで、触るとぷにぷにとした感触があります。脂肪細胞が塊になってできるもので、特にシニア期の犬や猫に見られることが多いです。通常、痛みはなく、触れても嫌がることが少ないため、あまり心配する必要はありません。
・乳頭腫(いぼ)
いわゆる「いぼ」で、高齢の犬や猫に多く見られます。表面がザラザラしており、小さくて皮膚と同じ色か少し濃い色をしています。
見た目が少し目立つかもしれませんが、大きくなることは少なく、悪性化することも稀です。
・皮膚の嚢胞(のうほう)
皮膚の下に袋状のしこりができ、触ると弾力があります。中には液体や老廃物が溜まっていることがあり、時には破れて内容物が外に出ることもあります。細菌感染で炎症を起こす場合もありますが、基本的には良性です。
<悪性のいぼ・しこり>
一方で、悪性のいぼやしこりは、放置しておくと他の組織に影響を及ぼす恐れがあり、早期発見と治療が非常に重要です。以下は代表的な悪性のいぼやしこりです。
・扁平上皮癌
主に高齢の犬や猫に見られる悪性腫瘍で、耳や鼻、唇などの体の露出部分に発生することが多いです。不規則な形をしており、表面が崩れていることもあります。触ると硬く、時には出血を伴うこともあり、早めの対応が求められます。
・肥満細胞腫
皮膚のどこにでもできる可能性があり、色や形状もさまざまです。最初は小さなしこりですが、悪性度が高く、放置すると急激に大きくなったり、他の臓器に影響を及ぼしたりすることがあります。
かゆみや赤みを伴うこともあり、触れると少し硬く感じられます。
・悪性黒色腫(メラノーマ)
黒っぽい色素沈着が見られるしこりで、手足や口内にできやすいです。形状が不規則で、急速に大きくなることがあるため、早めの対応が重要です。
いぼ・しこりが見つかったら|自宅でできるチェックポイント
犬や猫の体にいぼやしこりを見つけたとき、「すぐに病院に行くべき?」と悩むこともあるかもしれません。そんなときは、まず自宅で簡単にできるチェックをしてみましょう。
1. 大きさや形の変化を確認
いぼやしこりの大きさや形が、短期間で変わっていないか確認してください。急激に大きくなっているものや、形が不規則なものは注意が必要です。
定期的にサイズを測っておくと、変化が分かりやすくなります。
2. 痛みの有無をチェック
いぼやしこりを軽く触ってみて、犬や猫が痛がったり嫌がったりしないかを確認しましょう。触れるだけで嫌がる場合や、痛みを感じているようであれば、炎症や悪性の可能性も考えられるため、早めに動物病院を受診しましょう。
3. 出血や膿が出ていないか確認
いぼやしこりの表面がただれている、出血している、または膿が出ている場合は、感染や悪性腫瘍の兆候である可能性があります。これらの症状を見つけたら、すぐに獣医師に相談してください。
4. 色の変化に気をつける
いぼやしこりの色が変わっていないかも確認しましょう。赤く腫れていたり、黒っぽくなっていたりする場合は要注意です。色の変化は悪性のサインであることが多いので、定期的にチェックすることが大切です。
5. 増大速度を確認
しこりが数日や数週間で急速に大きくなっている場合も、早急に受診しましょう。
良性のしこりは通常、急激に大きくならないため、速いペースで成長しているものは悪性の可能性が高いです。
要注意!すぐに動物病院へ行くべき症状
いぼやしこりのチェック中に、以下のような危険な症状が見られた場合は、早急に動物病院を受診してください。
1. 急激な大きさの変化
しこりが短期間で急速に成長している場合、悪性腫瘍の可能性が考えられます。悪性のしこりは、急速に大きくなり、周囲の組織にも影響を及ぼすことがあります。
2. 出血が止まらない
しこりから出血が続いている場合、皮膚や内部で異常が起こっている可能性があります。特に、出血が止まらない場合は感染や悪性腫瘍の兆候かもしれません。
3. 触ると痛がる
しこりに触れると犬や猫が強く痛がる場合、内部で炎症や腫瘍が進行している可能性があります。痛みを伴うしこりは、良性よりも悪性である可能性が高いため、見逃してはいけない危険なサインです。
4. 発熱や元気の低下
いぼやしこりに関連して、発熱や元気がない、食欲が落ちるなどの全身症状が現れる場合も要注意です。腫瘍が全身の臓器に影響を及ぼしている可能性があるため、こうした変化が見られたら、早めの診察が必要です。
いぼ・しこりの治療法:手術から経過観察まで
愛犬や愛猫にいぼやしこりが見つかった場合、治療法にはいくつかの選択肢があります。
症状や病状に応じて獣医師と相談し、適切な治療を選ぶことが重要です。
<手術>
手術は、悪性腫瘍や急速に成長するしこりに対して推奨される治療法です。手術でしこりを摘出することで、再発のリスクを抑え、悪化を防ぐことができます。
メリットとしては、しこりを完全に取り除くことで、根治治療になる可能性がある点です。
一方で、デメリットは、麻酔のリスクや費用がかかることが挙げられます。
<薬物療法>
抗生剤やステロイドなどの薬物療法は、炎症を伴うしこりや感染が原因の場合に効果的です。薬物療法は体への負担が少なく、手軽に始められるというメリットがありますが、すべてのしこりに有効というわけではありません。
また、治療に時間がかかることもあり、症状が改善しない場合は別の治療法に移行する必要が出てくることもあります。
<経過観察>
小さく、急速な変化が見られない良性のいぼやしこりであれば、獣医師の指示のもと経過観察を行うことも一つの選択肢です。
経過観察のメリットは、無駄な治療を避け、自然に治癒する可能性があることです。しかし、しこりの変化を定期的にチェックすることが重要で、万が一変化があれば、すぐに対応する必要があります。
各治療法にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、しこりの種類や進行具合に応じて最適な方法を選ぶことが重要です。
予防と日頃のケア|愛犬・愛猫のためにできること
いぼやしこりの予防には、日常のケアが大切です。愛犬や愛猫の健康を守るために、以下のポイントを意識してみましょう。
・定期的なグルーミング
毛が長いと、皮膚にできた小さないぼやしこりを見逃しやすくなります。定期的にグルーミングを行うことで、皮膚の状態をしっかり確認でき、早期に異常を発見する助けになります。
・体の隅々をよく観察する
普段から体を撫でたり触ったりすることで、しこりなどの異常を見つけやすくなります。特に耳の裏や足の間、脇の下などは見逃しやすい部分です。
触れて「何か違う」と感じたとき、その気づきが早期発見の鍵になります。
・健康的な食事と運動
バランスの取れた食事と適度な運動は、全身の健康維持に欠かせません。免疫力を高めることで、いぼやしこりだけでなく、さまざまな病気の予防にもつながります。愛犬や愛猫に合った食事と運動で、元気な毎日をサポートしましょう。
・定期的な健康診断
動物病院での定期的な健康診断も欠かせません。獣医師による専門的な観察で、飼い主様が気づかない小さな異常を早期に発見できることがあります。
年に1~2回の健康診断を受けることで、長く健康な生活をサポートできます。
まとめ
愛犬や愛猫の体にいぼやしこりを見つけたときは、まず大きさや形、色の変化、痛みや出血がないかをしっかり確認しましょう。少しでも気になることがあれば、早めに動物病院で診察を受けることが大切です。
治療法には手術や薬物療法、経過観察などがあり、症状に応じた対応が必要です。また、日々のケアとして、グルーミングや体の観察、バランスの取れた食事と運動、そして定期的な健康診断を取り入れることで、いぼやしこりの予防や早期発見につながります。
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